【調査結果】
評価基準は5段階。
A:自殺対策地域ネットワークがすでに有効に機能している
(すでに広域で実践的な活動を行っている)
B:自殺対策地域ネットワークが機能し始めている
(モデル事業を行っているなど、ネットワークの核となる取り組みがある)
C:自殺対策地域ネットワークが立ち上がっている
(存在してはいるが、具体的な取り組みはまだなにもしていない)
D:自殺対策地域ネットワークを立ち上げる具体的な予定あり
(今年度中あるいは来年度中に立ち上げを検討している)
E:自殺対策地域ネットワークを立ち上げる具体的な予定はない
(設立準備会議などの具体的な検討が行われていない)
この基準に従って、計62の自治体は下記の通りに分類された。( )はランク別自治体数。
A( 3) |
秋田県、岩手県、青森県 |
B( 7) |
山形県、宮城県、仙台市、新潟県、兵庫県、島根県、鳥取県 |
C(10) |
福島県、千葉県、茨城県、福井県、徳島県、香川県、三重県、宮崎県、佐賀県、沖縄県 |
D(38) |
北海道、札幌市、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉市、神奈川県、横浜市、川崎市、富山県、石川県、山梨県、長野県、岐阜県、静岡県、静岡市、愛知県、名古屋市、京都府、京都市、大阪府、大阪市、堺市、神戸市、和歌山県、岡山県、広島県、広島市、山口県、愛媛県、高知県、福岡県、福岡市、北九州市、長崎県、大分県、熊本県、鹿児島県 |
E( 4) |
東京都、滋賀県、さいたま市、奈良県 |
【結果分析】
(サマリー)
「地域の自殺対策ネットワーク」の設置状況については、別の機関が行った調査(4月1日時点)に比べ、下図の通り、対策に向けた準備が短期間のうちに格段に進んだことが明らかになった。
これは、6月に成立した
自殺対策基本法の成果だと言えよう。
[ここでは、ランクA+B+C=設置済(20)、D=予定あり(38)、E=予定なし(4)]
ただし、自治体の担当者に詳しく話を聞いていくと、むしろ問題点が見えてきた。
「
(ネットワークを)設置しなければならないというから設置した。しかし、一体なにをどう進めていったらいいのか分からない」というのが、実は多くの自治体の本音だと分かったのである。
まず、CランクとDランクの自治体から見ていこう。
(Cランク)
10のうち5つが、自殺対策基本法成立後に立ち上がったもの。これには、法律により自殺対策に取り組む責務が自治体に課されたことが、大きく影響している。
ただネットワークの活動は、現在のところは関係者間の情報交換や対策の検討などに留まっており、実際に連携して実務的な活動を行っていけるようになるのかは今後の課題である。
「
どう民間と連携すればいいのか分からない」(行政担当者)、「
行政と民間との間に自殺対策に対する意識の違いがありすぎる」(民間団体代表)などの声も聞かれ、課題は決して少なくない。
(Dランク)
自殺対策基本法成立後に、ネットワークの立ち上げを検討し始めたところが多かった。
ただし「
ネットワークを立ち上げなければならないのは分かっているが、誰をメンバーに選べばいいのか、何に取り組んでいけばいいのか、それが分からない」「
ネットワークに組み込むべき分野があまりに多岐に渡るため、どう連携していけばいいのかイメージが湧かない」などの声も多かった。
同時に、来年度予算を確保するためにも、ネットワークの具体的なモデルを一刻も早く提示してもらいたいという声も聞かれた。
それ以外のランクについては、次の通り。
(Aランク)
自殺率が高いことで知られる北東北3県がAランクに。
この3県では、モデル事業として行われた自殺対策が確実に広がりを見せており、「自殺対策ネットワーク」も実践的である。それぞれに、ネットワークの「核」となる人や組織がいることが特徴。(秋田県は秋田大学、岩手県は岩手医大、青森県は精神保健福祉センター)
はじめからネットワークを作るねらいだったというよりは、実践的な自殺対策を行うため必要に迫られてネットワークを組んでいったという感が強い。そのため非常に機能的でもある。(例えば秋田では、行政と秋田大学が連携をして対策を立案し、保健所やNPOなどの現場で活動する人たちとも連携をして対策を実践している。)
(Bランク)
特徴的だったのが、兵庫県と島根県。いずれの県と市でも、実践的なネットワークが立ち上がっているので、いずれはAランク入りしていくと期待される。
(Eランク)
「4つの自治体しかEランクではなかった」と見るべきなのか。それとも「Eランクにはまだ4つの自治体が留まっている」と見るべきなのか。基本法の成立から3ヶ月経ったことを考えれば、やはり後者だろう。