6月15日付「毎日新聞」
自殺対策基本法:法案成立 国、自治体、民間の連携明記

 国と自治体、事業主、国民に自殺対策の責務を課した「自殺対策基本法」案が15日午後、衆院本会議で可決、成立した。自殺の防止と自殺者の親族のケアを目的に、年内に施行される。「個人の問題」として片付けられてきた自殺が、法律で「その背景にさまざまな社会的な要因がある」と位置付けられ「社会の問題」として対策が実施されることになった。8年連続で3万人台を記録している自殺者を1人でも減らすため、本格的な取り組みが始まる。
 同法案は、基本理念として自殺対策は「国、自治体、医療機関、事業主、学校、民間団体など関係機関で相互に連携して実施しなければならない」と明記し、国を挙げて総合的に取り組むとしている。
 具体的な施策は▽自殺防止の調査研究を推進し、情報の整理、提供を行う▽教育、広報活動を通じて、自殺防止への国民の理解を深める▽職場や学校、地域で心の健康を守るため、体制を整備する▽自殺の恐れがある人に必要な医療が適切に提供されるようにする▽自殺する危険性が高い人を早期に発見し、自殺の発生を回避するための体制を作る▽自殺未遂者が再び自殺を図ることがないよう支援する▽自殺者(未遂も含む)の遺族の心のケアを行う、など。
 政府は目的を達成するため、必要な財政上の措置などを講じ、国会に対し毎年、自殺の概要や自殺対策の実施状況に関する報告書を提出する義務が課せられる。【玉木達也】