6月1日付「読売新聞」
目立つ働き盛りの世代…30歳代の自殺、過去最多

 昨年1年間の全国の自殺者は3万2552人で、8年連続で3万人を超えたことが1日、警察庁のまとめでわかった。前年より227人(0・7%)増え、統計を取り始めた1978年以降、4番目に多かった。
このうち、全体の57%を占める50歳以上は前年より減ったが、30歳代は過去最多となるなど、働き盛り世代の増加が目立った。性別では男性が72・3%を占めた。動機は、景気が回復に向かっていることを反映し、借金苦などの経済問題は減った一方、健康や家庭問題は増加した。
 年齢別では、50歳代が7586人(前年比2・4%減)、60歳以上が1万894人(同0・9%減)で、いずれも2年連続で減っている。その一方で、30歳代は4606人(同6・3%増)、20歳代は3409人(同5・0%増)と増えたほか、19歳以下や40歳代も前年を上回った。
 遺書があった1万360人の動機を見ると、1番目の「健康問題」が4145人、3番目の「家庭問題」が1011人で、統計のある98年以降最多となったほか、仕事の失敗など「勤務問題」も増加している。これに対し、2番目だった「経済・生活問題」は3255人で、2年連続で減少した。ただ40、50歳代は引き続き「経済・生活問題」が突出して多く、経済的に追いつめられる中高年の苦しみが数字に反映している。
 一方、小中学生は73人で前年より8・8%減ったが、高校生は215人で5・4%増えた。インターネットを通じて知り合った人同士の集団自殺は91人で、前年に比べて36人増えた。
働き盛りの死…遺児の奨学金申請急増
 20〜40歳代の「働き盛り」の自殺増加で、高校進学のための自殺遺児の奨学金申請が過去7年間で約8倍に急増。政府の対策を求める声も高まっている。
 親を亡くした子供に奨学金を貸与するなどしている「あしなが育英会」によると、高校進学のために同会に奨学金を申し込んだ自殺遺児は、自殺者の総数が初めて3万人を超えた1998年は29人(全遺児の3・9%)だったが、昨年は230人(同16・5%)に増え過去最多となった。
 高校1年の女子生徒の申請時の願書には、「30歳代の父が会社を退職した後、次の仕事が見つからずに精神的に不安定になり、自殺した。借金があるが、残された母は精神状態が悪く働けない。中学では学費を払えない状態が続いた」とつづられている。
 自殺問題に取り組むNPO法人「自殺対策支援センター・ライフリンク」(東京)は今年4月から、自殺対策の法制化を求める署名集めを行っている。自殺者の総数にあたる3万人が目標だったが、すでに署名は4万人分を超えた。
 ライフリンク代表の清水康之さん(34)は、最近、若い人の自殺が増えたと実感する。「リストラが進んだせいで、会社に残った若い世代にしわ寄せがきている。過労やストレスに押しつぶされる人が増えているのではないか」
 「総合的な対策を皆で考えていかなければいけない」と清水さん。1日午後にはライフリンクの呼びかけで、自殺対策を推進する地方議員の有志の会が発足する。