6月1日付「毎日新聞」
自殺者:20〜30代急増 8年連続、全体で3万人超−−昨年

 全国の自殺者は昨年、3万2552人と8年連続で3万人を超えたことが1日、警察庁のまとめで分かった。例年と同じく中高年の自殺が多いが、20〜30代の若者の自殺者数が前年比で5%以上増えているのが特徴。原因・動機は健康問題と並んで「経済・生活問題」が目立っている。社会の将来を支える若年層の苦悩ぶりをうかがわせる結果になった。(社会面に関連記事)
 同庁によると、昨年の自殺者数は、過去最悪だった03年の3万4427人より減少したが、記録を取り始めた78年以降4番目に多かった。男性が2万3540人で全体の72・3%を占めた。
 年代別では、60歳以上が1万894人(前年比0・9%減)と最も多く、続いて▽50代7586人(同2・4%減)▽40代5208人(同2・1%増)▽30代4606人(同6・3%増)▽20代3409人(同5・0%増)▽10代以下608人(同3・2%増)などだった。また、小学生が7人、中学生が66人、高校生が215人あった。大学生は433人と、前年の370人より63人増えた。
 動機のトップは「健康問題」1万5014人(46・1%)。次いで「経済・生活問題」7756人(23・8%)▽「家庭問題」3019人(9・3%)▽「勤務問題」1807人(5・6%)――だった。
 「経済・生活問題」はバブル景気に沸いた90年には1272人だったが、景気の悪化とともに増加し、98年には6000人を超え、近年は主な動機として注目されるようになった。
 20〜30代の自殺は、厚生労働省の調査で同年代の死亡理由の中で最も多い。今回の警察庁のまとめで、遺書を残しており動機が明確な30代1409人のうち「経済・生活問題」は412人(29・2%)で「健康問題」452人(32・1%)に次いだ。20代では976人のうち「健康問題」313人(32・1%)▽「経済・生活問題」177人(18・1%)――だった。
 職業別では無職者が1万5409人(47・3%)▽サラリーマンなど被雇用者8312人(25・5%)▽自営業者3700人(11・4%)だった。【遠山和彦】
◆対策で防げる死だ−−自殺問題に取り組むNPO法人「自殺対策支援センター ライフリンク」の清水康之代表の話
 政府の対策がいっこうに進まないので高止まりが続いている。対策を取れば防げる死だ。最近は企業の中高年のリストラが進み、企業に残った若い世代の負担が増え、過労の上の自殺が目立つ。若年層が増えているのはこうした背景もあると思う。国民の命を守るのは政府の仕事で、法律で位置付け、社会全体で対策を取らないといけない。