5月14日付「毎日新聞」
ストップ自殺:あなたの「声」を NPO、全国7カ所で街頭署名

◆父失った男性「残される側、本当につらい」
 「自殺者のいない社会を実現したい」。社会的に追い詰められた末の自殺を減らすため、自殺対策の法制化を訴える街頭署名が13日、東京や大阪、福岡など全国7カ所で行われた。NPO法人「自殺対策支援センター ライフリンク」(東京都、清水康之代表)が中心となり、父親を自殺で亡くした遺児らも参加。法制化を第一歩に、遺族に深い悲しみを残す自殺を無くそうと、3万人署名の協力を呼びかけた。
 東京ではJR新宿駅西口周辺で、ライフリンクのメンバーや遺族ら約20人が「自殺対策の推進にあなたの『声』が必要です」と書いたチラシを配布。自殺者が98年以降、7年連続で3万人を超えている現状や、日本の自殺率がアメリカの2倍、イギリスの3倍で、先進国でも高い実態などを紹介し、通行人らに対策の必要性を訴えた。
 この日、長崎県から駆けつけた遺児の山口和浩さん(25)は、中学2年のとき、父親を自殺で亡くした。借金苦だったらしい。家の近くで車内に排ガスを引き込み、死亡している姿が今も目に焼き付いている。
 山口さんは「残される側は本当につらい。法律で自殺者が3万人からいきなり2万人に減るとは思わないが、行政に対策を行わなければならない責任が生まれる。法制化は一人でも自殺する人が少なくなる第一歩になるはずだ」と期待する。
 清水代表は「政府は自殺対策を始めたが、現状では関係省庁間の情報交換すらうまくいっていない。民間と行政の連絡、調整も不十分で、中央と地方の差も大きい。総合的な自殺対策を具体的に進めるには、足場となる法的根拠が必要だ」と話した。【玉木達也】