4月17日付「毎日新聞」
自殺対策: 新法で「遺族支援を」 「国の責務」明記 NPO法人、議員と連携へ

 厚生労働省は自殺防止推進のため、都道府県と政令市に対し相談体制の充実などの取り組みをするよう通知した。「自殺は社会の問題」とする政府の対策を受けた初めての措置。今後、東京のNPO法人が超党派の国会議員に連携を呼び掛け、自殺対策基本法(仮称)の制定に向けた活動が始まる。新法には「自殺対策は国と自治体の責務」と明記し、一人でも多くの命を救うことを目指す。(社会面に関連記事)
 日本では、98年から7年連続で年間3万人が自殺している。このため昨年7月、参院厚生労働委員会が自殺対策を求める決議を行い、政府は同12月、15年度までに自殺者を2万5000人前後に減らすことを目標にした総合対策を発表。厚労省が3月31日、都道府県などへの通知を行った。
 新法が想定する内容は▽効果的な予防策のために自殺の実態調査▽社会全体を対象にした総合対策▽自殺未遂者や遺族への支援−−などで、社会問題が原因の「不本意な自殺」は、適切な社会対策さえ講じられれば「避けられる死」と位置づけるとみられる。
 こうした動きの発端は、NPO法人「自殺対策支援センター ライフリンク」(清水康之代表)が昨年5月、東京・永田町の参院議員会館で「自殺を防ぐために何ができるか」をテーマに開いたシンポジウム。尾辻秀久厚生労働相(当時)や衆参両院議員ら200人以上が参加し、尾辻厚労相は「できることはすぐやる」と発言していた。
 ライフリンクの具体的な活動としては、法制化を実現させるため、全国で3万人署名を展開。約30の市民団体に協力を呼びかけ、5月中にも政府へ署名簿を提出し、早期の法制化を訴えていく。
 ライフリンクの清水代表は「自殺対策を確実に推進するには、法的な根拠が必要だ。関心が高まっている今こそ、法制化を実現させたい」と話している。【玉木達也】