『自殺対策基本法』の評価と課題


「自殺対策基本法」全党一致の成立
〜実効性ある具体策作り、民官学の連携で〜

  自殺対策基本法が、先の国会で成立した。自殺はこれまで「個人の問題」としてやり過ごされてきたが、基本法では「背景に様々な社会的な要因がある」として「社会の問題」と位置づけ、総合的な自殺対策の策定と実施を国や自治体、事業主らの責務とした。「年間自殺者3万人」という深刻な事態が1998年から続くなか、ライフリンクではかねてより「自殺は社会問題。国として対策に取り組むべき」と主張してきたが、基本法の制定により、ひとまずメッセージは体現した。国や自治体、民間団体がどう連携体制を構築し、どんな具体策を打ち出していけるか、今後の課題である。
署名の束を携えて主張

 「基本法」は自殺対策に関する初めての法律として、対策実施の責任所在を明確にし、対策の理念や基本施策をうたっている。
 主な中身は▽自殺は社会的な問題であり、対策の実施には国や自治体が責務を負うこと▽多角的観点から自殺実態の調査・解明を行い、対策にいかすこと(精神保健的観点からの「心理的剖検」では不十分)▽国や自治体、民間団体や医療機関など、関係者は密接な連携のもとで対策に臨むこと▽未遂者や自死遺族への支援を行うこと▽国および自治体は、自殺対策に取り組む民間団体を支援すること▽官房長官を長とする自殺総合対策会議を設置し、政府の対策を毎年国会に報告するよう義務づけること……などである。
 この基本法の実現に向け、ライフリンクでは4月から全国各地で「3万人署名活動」を展開した。目標3万人には、ひとりの死が年間3万積み重なる深刻さを社会に訴えようという狙いを込めた。作家の重松清さん、東大教授の姜尚中さんらが賛同者に名を連ね、「東京自殺防止センター」などが賛同団体として一緒に動いてくれた。
 その結果、6月初旬に署名は目標をはるかに超す10万人分が集まり、同7日、署名と請願書を扇千景参議院議長に提出した。これを受け、超党派による議員立法の形で、基本法が成立した。
 基本法の施行は9月以降になると見られるが、すでに施行後を見据えた動きも出始めている。
 政府は、内閣府に7月14日付で、関係省庁からの出向者で構成する「自殺対策推進準備室(北井暁子室長)」を発足させ、基本法の施行や大綱案策定の準備などに動き出した。
 民間団体でも、ライフリンクが中心となって「つながり強化」の動きを活発化。基本法という新しい枠組みの中でできうる最善の具体策とは何なのか、現場からの提言をまとめた。
 「これからの課題は、みんなで共有できる自殺対策のグランドデザイン(全体構想)を構築すること。そしてその下で、民・官・学がどう連携していくのか、それぞれの役割分担を明確にすること」と、ライフリンクの清水康之代表は語る。
 実効性のある自殺総合対策へ。さあ、思い切り踏み出していこう。